目玉おやじは屋敷の奥まったところにある部屋へ案内された。
男はポケットから鍵の束を取り出し扉の鍵穴に差し込む。カーテンが締め切られているようで、中には暗闇が広がっていた。
部屋の中からガスの抜けるような異音が聞こえる。目玉おやじは身構えた。
「驚かないで下さいよ」そう言った男は、照明のスイッチをパチンと押した。
照らされた部屋を素早く見渡す。部屋には大きなベッドが鎮座している。慎重に部屋に入りベッドを観察すると、壁との隙間に何か大きな肉の塊のようなものが蠢いているのが見えた。奇妙な音はそれが発しているようだ。
「ああ、また落ちてしまったみたいだ」
男は肉塊に近づくと下部に手を添えてベッドの上に登らせようとする。肉塊は男の介助を受けつつ小さな手足をばたつかせ、必死にベッドに上がると、「ぷぇ」と気の抜ける声を上げ体を横たえた。相当重かったようで男は息が上がっている。
「紹介します。私の息子のまことです」そう言って肉塊の肩?に手を乗せた。
目玉おやじは肉塊に近づきその眼を見た。知性の欠片も感じられない視線がぎょろりとこちらを向く。
「ふむ、息子さんは人間ではなかったか」
その言葉に、男は沈痛な面持ちで応える。
「いえ、私の息子は正真正銘の人間です。このような姿になったのは、おそらく呪いによるものだと思います」
話によると一週間ほど前、庭から帰ってこない息子を心配して様子を見にいくと、地面にこの肉塊が転がっていたそうだ。息子だと思ったのは、どことなく面影を感じたかららしい。目玉おやじはこの肉塊が男の息子である確証は無いと思ったが、口には出さなかった。
男は毎日息子を元に戻す手がかりを探していた。知り合いが紹介してくれた祈祷師によると、息子は悪さをして呪われてしまったのだという。手の施しようがないと追い返されてしまったため、自力でどうにかするしか無いと思い呪いに関する書物を片っ端から調べていった。
「私達は呪いを解くために様々な事をしました。どれもだめでしたが……ひとつだけ実行できていないことがあります」
男は一冊の古びた書物を開き、経年により掠れた文字を指差した。
目玉おやじは書物へ目を走らせる。その内容を要約すると、身体に変化を及ぼす呪いをかけられた者の呪いは呪いを克服した者と性交渉をすると解ける。と、記されていた。
呪いを克服した者。
「なるほど。わしのことか」自身のこれは呪いではないが、捉えようによってはそうなるのだろう。しかし胡散臭い書物である。そのような話は今まで聞いたことがなかった。
男は、腕を組んで渋い態度を取る目玉おやじの目の前に膝をつくと、頭を床に擦り付け悲痛な声で懇願した。
「お願いします。無茶苦茶な頼みだと言うことはわかっています。ですが、まことは私の命よりも大切な息子なのです。全財産、いや、私の命だって捧げても構いません。ですからどうか、どうか私の息子を救って下さい……!」
男は地面にうずくまり静かに泣いている。
この肉塊がこの男の息子という証拠も無いし、仮に本物だったとしても、この方法を試したとて元に戻るという保証はない。
しかし、男の話を聞いた目玉おやじは、大きな目から涙を流し、しきりに頷いていた。
「うむ、あい分かった。おぬしの息子を思う気持ち、しかと受け止めた。面をあげよ」
男に顔を上げさせると、目玉おやじは大柄な体をかがめ男の肩を力強く叩いた。
「安心せい、金も命も取らぬ。まことくんはわしに任せよ!」
ありがとうございます、ありがとうございます。と繰り返す男から離れ、まことくんに近づく。
尊大な態度を取りまことくんと性交渉をすると豪語してしまったが、実際にするつもりはなかった。先程は熱くなり了承してしまったが目玉おやじはこの肉塊を本物のまことくんとは信じていない。
しかし了承してしまった手前、やはりやめるとは言い出しづらいのでそれらしく振る舞い適当に誤魔化す算段である。その後、改めてこの状況を打開する方法を探そうではないか。
ベッドの前に立ち和服を脱ぐ。
改めて肉塊……もとい、まことくんを観察する。二メートルを有に超える体長で、胴体は芋虫のように肥え、腹は弛んでいる。対する手足は細く頼りない。顔らしき部分にはつぶらな瞳と、口唇のような裂け目が備わっていて、常人であれば誰しも嫌悪を抱く外見をしている。下半身を見ると、長細い管のような生殖器がぶら下がっていた。あまりの長さに少々驚いたが、見ないふりをしてまことくんに近づき声をかけた。
「まことくん、隣に座ってよいか?」
まことくんは「ぷぇぇ、ぷぇぇ」と、涎を垂らし鳴く。それを肯定と捉え隣に座る。すると、まことくんが思わぬ俊敏さを発揮し、伸しかかってきた。
「ぐえっ!ま、まことくん、落ち着くのじゃ!」
油断した。自身がこのような鈍そうな生物に圧されるなど思いもよらなかった。どこからこの馬鹿力が発揮されている? 内心悪態をつき抜け出そうと身を捩るが抜け出せない。自身の力が失われていたことを思い出し、脳からサーッと血の気が引く感覚がした。
体に重く纏わりつくまことくんを引き剥がそうと巨大な頭を押す。焦って手が滑る。まことくんは必死の形相でよだれを垂らしている。目玉おやじは不快感に顔を顰めた。
「う、ぐうぅ……」
「まこと、離れなさい!」
ただならぬ様子に父親が駆け寄ってきた。二人揃ってまことくんの頭を押さえ引き剥がそうと奮闘するが、頑なに動かない。
まことくんは歯のない口で乳首にむしゃぶりついていた。目は血走り、額と思わしき部分に青筋が浮んでいる。弛んだ腹を密着させ、細い手足を体にひしと巻きつかせて拘束される。
「いっ……!離せ、あ、うわっ」
まことくんは大きな口唇から舌を出し、小ぶりな乳首を舐る。次第に腰をカクカクと動かし始めた。
目玉おやじの胸元をよだれまみれにし、吸い付く口元からは食用蛙のような唸り声が聞こえる。興奮しているようだ。
太もも辺りに滑る何かが這う感触がし、鳥肌が立つ。考えるまでもない。あの長細い生殖器だろう。何とか挿入を避けようと、腰を浮かせて尻から生殖器を遠ざける。
まことくんは行き場のない性欲に焦れて、獣のような雄叫びを発した。目玉おやじはその声に怯む。一瞬の隙を見逃さなかったまことくんは、腰を動かし生殖器の先端を肛門にあてがった。
「ひっ……」
そのまま亀頭が腸壁に割り入ってくる感覚がする。目玉おやじは伸し掛る巨体の重みで身動きが取れず、ただ成り行きに身を任せることしかできなかった。
「うぁぁぁぁ〜…あああ……」
まことくんは不器用に腰を前後させ、根元まで生殖器を挿入した。痙攣するきつい肉壁に包まれ、だらしなく顔を歪ませ快感に震えている。
入ってはいけないところまで入っている。目玉おやじは凄まじい圧迫感に目を見開き、陸に上がった魚のように口を開いたり閉じたりする。
「だ、大丈夫ですか」
控えめに声をかけられ、視線だけをそちらに向けた。そういえばまだいたのか……。まことくんの父親は顔面蒼白で顔の筋肉を引き攣らせている。そんな顔をさせるとは、今の自分はよっぽどひどい有様なのだろう。あまり見られたくない。
「ひゅ……み、見な……で、出て……」
うまく声が出せなかったが、意思を汲み取ってくれたのか部屋から出て行った。出て行ったはいいが、この状況はどうしたものか。まことくんを見ると無垢な黒い目がこちらを見つめてきている。腹に埋まる剛直とのギャップで頭がおかしくなりそうだった。
何とか抜け出せないものかとわずかなスペースで体を浮かせ後退しようと身をよじる。しかし、まことくんは目玉おやじが逃げようとしていることに気付き憤慨した。全体重をかけ、細い手を使いがっちりと体を拘束すると腰を振りたくる。
内臓を生殖器で思い切り殴られる。目玉おやじは悲鳴を上げ、白髪を振り乱した。
「んぎっ!ひぃっ……ひっー、いー、いっ!」
腹が内側から押され、ぼこりとふくらんでいるのがわかる。まことくんの長い生殖器と、ずっしりと重い腹に挟まれ、内臓が圧迫される。
腸壁の奥が抉られるたび、口から悲鳴が漏れる。目玉おやじの恐怖心は臨界点を突破しそうであった。怖い。覆い被さる化け物が、内臓を抉る凶器が、理不尽な蹂躙から逃れられない非力な自分が、全てが恐ろしくて堪らない。全盛期にも、目玉になってからも感じたことのない怖気に襲われる。
精液が込み上げて来たまことくんは必死の形相でよだれを撒き散らしながら吠える。悍ましいこの世のものとは思えぬ咆哮に精神の限界を迎えた目玉おやじは、爆発したように半狂乱で叫び暴れた。
「あああ……!いやじゃ!離せ!離せーっ!」
まことくんは必死の抵抗もどこ吹く風で、最奥に亀頭を押し付け吐精した。腸壁にこってりとした精液を擦りつけるように体を揺らす。まことくんの醜い巨体の下からわずかに見えるすらりと長い足が、ビクビクと痙攣している。
まことくんに埋もれながら、目玉おやじは鬼太郎と話したことを思い出していた。今の父さんは弱いから、軽はずみなことはしないで下さい。約束ですよ。心配そうな顔でそう言っていた。本当に軽率だ。仲間たちの言う通り、出過ぎた真似をするべきではなかった。
すまない、鬼太郎。父は約束を守れなかった。
まことくんは恍惚とした、みっともない表情でプルプルと震えている。一度の射精では満足できなかったようで、倅との約束を反故にし打ちひしがれる目玉おやじへ再び抽送を始めた。
すっかり抵抗する気の失せた目玉おやじは、揺さぶられるままに喘ぎ声を漏らしている。
抵抗を諦め動かなくなった肉壺に、まことくんは大層喜んだ。奇声を漏らしながらきつく締め付ける肉壁で自身の生殖器を扱く。
まことくんは体を起こすと、ぐったりと揺さぶられる目玉おやじを焦点の合わない目でじっと見つめた。突くたびに膨れる腹を興味津々といった様子で観察している。まことくんはおもむろに、自身の生殖器の形に膨れた腹を鷲掴みにした。
「おおっ!?」目玉おやじの体が跳ねる。
まことくんは初めこそ驚いたが、跳ねる肉体の可笑しさと、掴んだ際の亀頭の気持ちよさに、夢中で突いては掴みを繰り返して喜んだ。
「おごっ、やえ、おええっ、やへっ」
腹を外側と内側から蹂躙され、襲いかかる吐き気で全身から汗が吹き出す。嘔吐してしまいそうなのをすんでのところで我慢する。涙と涎とを垂れ流しえずいていると、一際強く腹を掴まれた。胎の中に射精された感覚がする。まことくんは吐精しながら腹越しに亀頭を捏ね回し、痺れるような快感に酔いしれている。目玉おやじは我慢が効かず吐いてしまった。
思う存分亀頭をいじくり回したまことくんは、目玉おやじの口元が吐瀉物で汚れていることに気づいた。腹から手を離し、再び目の前の肉体に覆い被さると、汚れた口元を舐めまわす。
「んぶっ!?んー!んー!」
嫌がり抵抗する体を押さえつけ、唇に食らいつく。口内に大きな舌を押し込むと、小さな歯列が噛み付いて来た。大した反撃にはなっていないが、まことくんは叱りつけるように未だ胎内に収まったままの生殖器を抽送する。内側のヒダを伸し、押しつぶすように亀頭で扱く。すると、次第に口が緩みまことくんの分厚い舌を受け入れるように吸いつきだした。
目玉おやじは窒息で気絶しそうになりながらも、何とか気を保っていた。このまま意識を失ってしまったら、この化け物に殺されてしまう予感がしたからだ。一度は奇跡的に生かされたこの命。二度目はないだろう。こんなところで消えてしまうのは嫌だ。
まことくんの性欲は止まることを知らない。口を解放し、ブルブルとその身を小刻みに震わせると、また射精した。先程まで硬く閉ざされていた肛門は、大量の精液によって泥濘み、女性器のように媚びてまことくんの生殖器を緩く包み込む。それが気に食わないのか、きつい締め付けを促すように目玉おやじの上で跳ねるちんぽを掴んだ。
いきなり弱点を鷲掴みにされた目玉おやじは背筋を凍らせた。まことくんは生殖器への締め付けが戻った悦びで、より一層激しく抽送する。シーツに体を押し付けられ潰れたカエルのような格好をした下半身に容赦無く全体重をかける。目玉おやじは「げぇ!」と妙な声をあげた。
ドスドスと真上から内臓を突かれる。無防備な体勢で体内を嬲られ続けた目玉おやじは無様に絶頂した。まことくんも痙攣する肉壁につられるように、何度目かもわからない吐精をした。
流石にもう飽きたのではないか。期待する目玉おやじの想い虚しく、まことくんは腰振りを再開した。絶望した目玉おやじは抵抗を諦めた。蹂躙がいつか終わることを祈りながら、締め切ったカーテンの隙間から僅かに射す昼下がりの陽を眺めるのであった。