エピローグ

「鬼太郎さん、こっちです」
 鬼太郎と猫娘は、まことくんの案内で大きな屋敷にたどり着いた。
 今回の妖怪には大いに手こずった。何とも妙な生態の妖怪で、子供たちを攫い代わりに醜い肉の塊を置いていくのだ。それだけならまだいい。肉塊を最初に発見した親族は、その肉塊を本物の子供だと思い込んでしまう。おかげで肉塊を破壊しようとする鬼太郎たちを親族らが糾弾し、警察に通報し騒動となったのだった。
 本体は大したことは無かったが、妙に疲れる騒ぎであった。
 この屋敷はまことくんの家で、最後の肉塊を破壊しにやって来た。
 扉に差し掛かったところでまことくんが「うわあっ」と声を上げた。何かあったかと鬼太郎たちが身構えると、ねずみ男が扉の横に座っていた。
「ねずみ男?なぜこんなところに」
 何となく顔色が悪いように見えた。煮え切らない様子であー、とか、うー、とか言っている。その態度に猫娘はイラつき、爪を見せ恫喝した。
「あんたねぇ、言うことがあるならはっきりしなさいよ」
「すまねぇ、鬼太郎!俺、とんでもないことをしでかしちまったかも……」
 ねずみ男が今までしでかしたことでとんでもなくなかったことがあっただろうか?鬼太郎は一人問答する。猫娘はさらなる揺さぶりをかけるが、ねずみ男は硬く口を閉しそれ以上は喋らなかった。
 顔面に傷を負ったねずみ男を放置し屋敷内を進んでいく。
 まことくんの部屋へ向かう廊下に差し掛かったところで異様な気配を感じた鬼太郎は、まことくんと猫娘をその場で待機させ奥の部屋へと向かった。目的地についた鬼太郎は、扉の前に蹲り震える中年男性の前に立つ。声をかけると、ぶつぶつと独り言を呟いていた男は顔をあげ驚いた。
「き、君は誰だ?」
「僕は鬼太郎と言います。まことくんのお父さんですか?まことくんを連れ戻して来たのですが……」
「何?」男は廊下の向こう側に目を凝らす。確かに自身の息子のような人影が見えた。
 まことくんの父親は信じられないといった様子で背後の部屋と息子の姿を交互に見ている。そしてみるみるうちに顔を青ざめさせていく。
「嘘だ、そんな。じゃあこの部屋にいるのは……」
 立ち上がってドアノブを掴もうとするが、腰が抜けているようでその場でへたり込んでしまった。
「無理をしないでください。もしかして、この中に肉塊があるのですか。安心してください。僕が退治しますので」
 扉のノブに手をかけると、男は萎えた脚を引きずり鬼太郎にしがみついた。
「駄目だ、鬼太郎くん!その部屋には入らないでくれ……!」
 本物の息子の姿を見たのにまだ洗脳されているのか? 鬼太郎は驚きつつ「すみません」と声をかけ、肩を押し軽く突き飛ばす。
 まことくんの父親が転がっている隙に鬼太郎は扉を開け放った。

戻る